【ジャニーズと日本社会:5】「告発」を「暴露」にしたアングラ界隈によるパラドックス

ジャニー喜多川の性加害を世に出したのは、AV監督の村西とおると本橋信宏、そしてアングラ系出版社だった。だからこそ暴かれ、だからこそ信じられなかった──1988年におけるメディアの分断が生んだ構造と、その時代に漂った「嫌な感じ」の正体を考える。
松谷創一郎 2026.05.25
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アングラ界隈だから世に出せた

 1988年に出版された、北公次氏の『光GENJIへ』。この「暴露」を複雑にしたのは、その本を世に送り出したのが、出版社のデータハウスをはじめ、いわゆるアンダーグラウンド界隈だったことがあります。

 そもそもこの本のきっかけとなったのは、当時アダルトビデオで事業を大きくしていたAV監督の村西とおるさん。1988年に村西さんは週刊誌記事でジャニーズ事務所とトラブルとなり、その仕返しのために情報を集める「ジャニーズ事務所マル秘情報探偵局」という電話回線を会社に引きました。そこで集まってきたのが北公次さんの噂で、彼への取材を経て本が出版されます(『弁護士ドットコム』2023年8月28日)。

 インターネットもない当時、この界隈はいま以上に魑魅魍魎な界隈でした。村西さんがビデオという新たなメディアを使ってのし上がっていく姿はNetflixのドラマ『全裸監督』で描かれていますが、その原作でもある村西さんの評伝『全裸監督 村西とおる伝』を書いたのはノンフィクションライターの本橋信宏さんでした。北公次氏の『光GENJIへ』のゴーストライター(リライター)を務めたのも、この本橋さんです。彼らは、ジャニー氏の性加害を「スキャンダル」として扱い、そして北公次さんの「暴露」は表に出ることとなったわけです。

 事実として確実に押さえなければならないのは、ジャニー氏の性加害は「スキャンダルの暴露」としてではあったものの、AV界隈の彼らだからこそ世に出せた側面があることです。

「スキャンダル暴露」の副作用

 しかしそれには副作用もありました。AV界隈の彼らが扱ったからこそ、多くのひとはこの話を信じませんでした。怪しげなアングラ界隈のゴシップとして片付けられてしまい、大手メディアも受け手の多くもまともに取り合わなかったのです。

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