【ポピュラー文化の余白:2026-10-09】HBO MaxのHulu移籍、『ダウンタイム』の消化不良、スピルバーグの老境『ディスクロージャー・デイ』

HBO Maxの移籍を追い、美容整形ドラマ『ダウンタイム』の踏み込み不足を惜しみ、『ディスクロージャー・デイ』でスピルバーグの老境を感じる──週に一度、ポピュラー文化の余白を覗く短評集です。
松谷創一郎 2026.10.09
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  • 今週のラインナップ

  • HBO Max、U-NEXTからHuluへ──配信はまだ競争の段階

  • 民放ドラマが海外に向かう──『kiDnap GAME』と『メリーベリーラブ』

  • 『見知らぬ私』──中盤までは引っ張るデンマーク発ミステリー

  • 『ダウンタイム』──ルッキズムに踏み込まない美容整形ドラマ

  • 『ディスクロージャー・デイ』──スピルバーグの老境

***

◇HBO Max、U-NEXTからHuluへ──配信はまだ競争の段階

 10月1日から、U-NEXTからHBO Maxが抜けました。その代わりという感じで、新たにUniversal+がU-NEXTに入りました。一方HBO Maxのほうは、Amazonプライム・ビデオで月額1000円の追加課金のチャンネルとして、Huluでは追加料金なしでそれぞれ配信されるようになりました。

 ユニバーサル作品は、日本にはUSJがあることもあって人気があります。最近なら『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』がヒットしましたし、『ミニオンズ』のシリーズも人気です。ただ、強いのは映画でドラマはそれほどでもありません。『SUITS/スーツ』などはありますが、正直ぱっとしません。

 一方のHBO Maxは、『ハリー・ポッター』などのワーナー作品に加えて、ドラマが強い。最近なら、ノア・ワイリー主演の医療ドラマ『ザ・ピット』ですね。ワイリーが出演していた『ER緊急救命室』を思わせる作品です。

 それを考えると、U-NEXTはなかなかつらい入れ替えになりましたね。私もゾンビドラマの『THE LAST OF US』シーズン2をまだ観ていなかったのですが、結局U-NEXTでは観られなくなってしまいました。あれもこれも観るわけにはいかないのでしかたないのですが、ちょっと惜しい。

 逆に停滞気味だったHuluは、HBO Maxが入ったことでボリュームは増しました。もともとHuluには強みがありません。親会社の日本テレビはもともとドラマがそれほど強くなく、スタジオジブリを子会社に持ちながらもジブリ作品は配信されていない状況。そこにHBO Maxが入っても、日本の視聴者はいまアメリカのドラマにあまり関心がないので、新たな会員を呼び込むほどの力にはならないだろうと見ています。

 あーしかし、『ハリポタ』の新作ドラマが年末から始まるんですよね。そうだそうだ。これをHuluもプッシュしていますね。

 もともと、日本テレビとワーナーは近い関係にありました。1998年には、東芝、ワーナー、日本テレビの3社が出資して、映画製作会社・トワーニを設立しました。社名は3社の頭文字から取ったものです。最後の作品となった『キューティーハニー』(2004年)が大赤字となって同年に廃業しましたが、その後もワーナーの日本法人は日本テレビと組んで『デスノート』シリーズなどの邦画を創って、関係は続いてきました。

 ただ、そのワーナーブラザースジャパンも、昨年末で劇場配給部門を事実上解体しました。いまワーナーの洋画は東宝のグループ会社が配給しています。

 なんにせよ、ハリウッドメジャーと日本の配信サービスの関係に変化が生じたわけです。

 Disney+にはディズニーと、ディズニーがちょっと前に買収した20世紀スタジオ(旧フォックス)。U-NEXTにはユニバーサルで、HuluにはHBO Max。そしてアメリカでは、パラマウントとワーナーの合併が完了し、新会社が「スカイダンス」になると発表されたばかりです。HBO Maxのブランドは残るのでしょうが、スカイダンスが今後どう動くかで日本の配信サービスとの関係も決まってくるはずです。

 一方、Amazonプライム・ビデオとNetflixはオリジナルに力を入れながら全方位外交です。とくにAmazonは作品ごとのレンタルが充実していて、レンタルビデオ店の代わりになっています。U-NEXTもそういうところがありますが、ディズニー作品がないぶん、個別の有料レンタルではAmazonが秀でているのです。

 Netflixはソニー・ピクチャーズと距離を縮めているんですよね。最初の見放題配信・Pay-1ウィンドウを2027年から全世界で始めることは発表されています。ソニーは早い段階でOTT競争から降りたのですが(PS3-4をうまくプラットフォームにしきれなかった)、ここでNetflixに近寄っています。Netflixはワーナー買収から降りましたが、その代わりにソニーに向かうことは十分に考えられます。来年くらいにいきなり両社が統合って話が出るかもしれませんね。

 とはいえ、こんなに分かれても、多くの人はたくさんは契約しませんよね。私のようにAmazonプライム・ビデオ、Netflix、ディズニープラス、U-NEXTの4つを契約している人はほとんどいないはずです。普通はAmazonプライム・ビデオ以外にNetflixかU-NEXTくらいでしょう。U-NEXTは映画のアーカイブが充実していて、TBSやテレビ東京の番組も入っているので、私も非常に助かっているのですが、それでも今後どうしようか迷うところ。次のDiseney+の更新で考えているのは、Disney+とHuluをセットプランで両方入ることです。両方で1890円。アメリカではHuluはDisney傘下なんですよね。

 まぁただ、去年からずっと言っていることですが、動画配信サービスがこんなにバラバラにやっていても、日本のOTTは共倒れになるだけです。AmazonやNetflixに勝てるわけないから。視聴者もすべてを契約できるわけではないので、どこかで再編するしかないのです。

 ただ今回の移籍劇を見ると、まだまだ競争の段階にあることはとても感じられました。ハリウッドメジャーの再編に巻き込まれているな、とも思いますけどね。

◇民放ドラマが海外に向かう──『kiDnap GAME』と『メリーベリーラブ』

 今週、フジテレビ『kiDnap GAME』と日本テレビ『メリーベリーラブ』が始まりました。どちらも海外展開を前提とした国際共同製作のドラマ。この2作についてYahoo!ニュースのほうで記事を書きました。以下がそれです。

 フジは自分たちが中心になって香港や韓国の会社を集め、日テレは韓国最大手のCJ ENMの制作力とディズニープラスの配信網に乗りました。座組からして対照的です。

 第1話を両方観て面白かったのは、2作の見え方がまるで違ったことです。『kiDnap GAME』は韓国語のセリフも日本語に吹き替えられていて、日本のドラマに見えます。『メリーベリーラブ』は字幕で通し、画も明るくて背景をぼかしていて、韓国ドラマに見えます。

 背景にあるのは、テレビ局が放送だけでなく作品そのもので稼ぐ会社に変わらなければならない事情です。韓国には20年ほど遅れているので、組むことで近道をしようとしているわけですね。

 どちらのやり方がうまくいくのかは、まだわかりません。とりあえず2作とも最後まで観るつもりです。まぁただ、『メリーベリーラブ』はキャストが強くて予算は抑えめなので、リスクヘッジができている感じはあります。一方『kiDnap GAME』はハイリスク・ハイリターン。バンコクが出てくるので坂口健太郎のファンのBLACKPINK・LISA(タイ人)が出てくれば、注目されるとは思いますが、まぁギャラ的にありえないか。LISA、『ホワイト・ロータス』に出てるんですよね。

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