【ポピュラー文化の余白:2026-06-26】白色テロを描く台湾映画『大濛(霧のごとく)』、「恋愛禁止」不要のDRAW♡ME、日本版コンテンツ振興院
◇台湾映画『大濛/霧のごとく』──白色テロを描いた台湾の「負の歴史」
Netflixで台湾映画『大濛(ダーモン)』を観ました。日本では5月から『霧のごとく』というタイトルで劇場公開されているのですが、なぜかほぼ同じ時期に配信が始まっていました。
この作品の存在は、今年1月の時点ですでに知っていました。岩波書店の雑誌『世界』2月号に、文筆家の栖来ひかりさんによる「足元を確認しながら深い霧をかきわけて進む──台湾映画『大濛』」という論考が掲載されていたからです。台湾国内で大ヒットしており、興行収入は5億円を突破する大ヒットとなっているそうです。監督は、チェン・ユーシュン(陳玉勳)。日本でもリメイクされた『1秒先の彼女』の監督。
舞台は1950年代の台湾。蒋介石の国民党政権が台湾へ渡り、戒厳令下で反政府的とみなされた人々を次々に逮捕・処刑していった「白色テロ」の時代を舞台とします。粛清の対象になったのは、必ずしも要人ばかりではなく、むしろ末端の市民や兵士も含まれていました。本作は、その白色テロを真正面から題材にしています。
台湾にとってこれは紛れもなく「負の歴史」です。白色テロの時代を描いた映画といえば、ホウ・シャオシェンの『悲情城市』(1989年)やエドワード・ヤンの『牯嶺街少年殺人事件』(1991年)、最近だとゲーム原作の『返校 言葉が消えた日』といった傑作がありました。
思えば1990年代までは、日本においては台湾映画や香港映画のほうが、韓国映画よりもずっと馴染みのあるアジア映画でした。状況が一変したのは90年代後半で、『シュリ』を起点に韓国映画が一気に台頭し、いまではすっかりさま変わりしています。そんななかで、台湾が改めて自国の暗い過去を、若い世代へ向けて丁寧に描き直していることが注目されます。